プロによる舞台公演と伝統芸能ワークショップ こども芸能体験ひろば in ちょうふ ライブレポート

執筆 : 櫻庭由紀子|写真 : 菅原康太

能楽、歌舞伎、日本舞踊、邦楽、雅楽、寄席芸能、民俗芸能など、長く受け継がれてきた芸を体感できる「江戸東京伝統芸能祭」。今回、こども向けイベントとして、1月18日(日)、調布市文化会館たづくりにて、「こども芸能体験ひろば in ちょうふ」が開催されました。落語 ・ 和妻(日本の手品) ・ 狂言 ・ 三味線(清元) ・ 日本舞踊の各ジャンルを、プロの指導による体験と、5つの芸能をダイジェストで一度に楽しめる特別公演。体験と鑑賞のライブレポートをお届けします!

5つの芸能をそれぞれ体験 ——

イベントの前半は、落語 ・ 和妻 ・ 狂言 ・ 三味線 ・ 日本舞踊の5つのジャンルに分かれて、子どもたちがプロの指導を受けるワークショップです。
各ジャンルに分けられたブースで、芸能の歴史や基本の所作を学び、実際に体験していきます。間近で見るプロの芸に、子どもたちは興味津々。初めての三味線や踊りの所作、発声、技に挑戦していきます。最初は緊張気味だった子どもたちも、第一線で活躍する演者たちの熱気あふれる指導に、次第に目を輝かせて、夢中になっていく様子が印象的でした。
体験のまとめはみんなで発表会。身につけた技を子どもたちが披露します。落語のブースでは、扇子を箸に見立てて「そばをすする」所作に挑戦。「ズズッ」と威勢のいい音を響かせる姿は、いっぱしの落語家です。中には「このそば、堅いなァ」などオリジナルの演出を入れる芸達者も。
短い時間での上達ぶりに、見守る保護者の方々からも大きな拍手が送られていました。

伝統芸能が一同に!
贅沢な舞台公演 ——

後半は、舞台を「くすのきホール」に移し、5つの芸能を一度に楽しめるダイジェスト形式の特別公演が行われました。
進行を務めるのは、落語家の雷門小助六さんと雷門音助さん。軽妙なトークで客席を和ませながら、各芸能の魅力や見どころを分かりやすく解説していきます。まずは日本の手品「和妻」から始まりです。華やかな振袖に身を包んだ和妻師きょうこさんの口上と音楽に合わせ、ハンカチや扇子を使った芸を繰り出します。「タネも仕掛けもない」空っぽの箱からは、「いよぉー!」の声に合わせて白い長い絹が舞い、大きな歓声が上がりました。舞台の準備を終え、次は清元協会による演奏です。歌舞伎や日本舞踊の伴奏として発展した三味線音楽のひとつです。この日の演目は『玉うさぎ』。月の兎の伝説と、かちかち山をモチーフにした物語です。「昔むかし やつがれが」と始まり、「カチカチ カッチカチ かちかちの山と言う内に」とお馴染みの場面を、三味線にあわせて独特の節で歌います。清元の演奏で踊る「日本舞踊」の演目は、『六玉川』と『玉屋』の2曲。六玉川とは、古歌に読まれた全国の有名な6つの玉川のことで、調布の玉川(東京都の多摩川)もそのひとつです。川の水の流れや、布を川で洗いさらす動作を、2枚の長い布を巧みに操り、詩情豊かに表現していました。「玉屋」は江戸時代のシャボン玉屋さん。子ども相手にシャボン玉をふきながら市中を流します。「さぁさ寄ったり見たり 吹いたり評判の玉屋」の歌と三味線に合わせて踊る姿に、江戸の粋を感じました。

笑いの2大芸能でフィナーレ ——

休憩を挟み、舞台はいよいよクライマックスへ。
「狂言」の演目は『柿山伏』。山伏が柿をぬすみ食いして、こらしめられるというストーリーです。
シテ(主役 : 山伏)とアド(相手役 : 畑主)による掛け合いや、カラスやトンビの真似、驚いたり笑ったりなど狂言ならではの語り口と所作に、会場のあちこちから笑い声が上がります。
わかりやすい内容であることと、既に伝統芸能にハマっていることもあり、字幕などがなくても、子どもたちは狂言の笑いに浸ることができました。そしてトリは、三遊亭遊吉師匠が飾ります。演目は落語『牛ほめ』。父親から家の褒め方を教わる与太郎がとんちんかんな返しを繰り返すという、オウム返しの典型的な演目です。
扇子と手ぬぐいだけを小道具に、テンポ良く語る姿に子どもたちは笑いながらも釘付け。
「秋葉様のお札をおはりなさい、穴が隠れて屁の用心になりましょう」のサゲに、会場は大笑いの渦でフィナーレとなりました。最初は初めてのドキドキした表情が、すぐにワクワクの好奇心に変わり、帰る頃には「面白かった!」「すごかった!」の笑顔になった子どもたち。体験し鑑賞したことで、日本の伝統芸能の美しさと楽しさを、しっかりと心に刻み込んだようです!

伝統芸能の世界をのぞく!
この春、注目の公演情報 ——

江戸東京伝統芸能祭では、本格的な舞台公演から入門編まで、子どもから大人まで楽しめる彩り豊かなプログラムをご用意しております。
特に2026年3月20日には、普段は入ることのできない国立劇場の稽古場にて、「伝統芸能の『しごと』にふれる一日!」を開催。
太神楽の体験や日本舞踊を間近で鑑賞できるほか、化粧の実演、衣裳の着付け、鬘(かつら)の装着など、日本舞踊を支えるさまざまな“しごと”に触れることができるな特別なプログラムです。ぜひチェックしてみてください!

伝統芸能の「しごと」にふれる一日!

2026年3月20日(金 ・ 祝)、国立劇場稽古場にて開催!
目の前で楽しむ日本舞踊や、自分で挑戦できる太神楽にくわえ、
日本舞踊を支える“しごと”や道具の紹介コーナー、三味線体験もお楽しみいただけます。
伝統芸能も、舞台裏も、まるごと体験できる一日!

櫻庭由紀子

北海道出身の作家、ライター。
落語をはじめとした伝統芸能、江戸文化、江戸怪異について解説する一般書、小説、コラムを執筆する。
近著に「江戸の怪談がいかにして歌舞伎と落語の名作となったか」「落語速記はいかに文学を変えたか」
「古典エンタメあらすじ事典」「江戸でバイトやってみた。」がある。

このコラムについて
企画
  • 主催企画
ジャンル
  • ライブレポート
  • 能楽
  • 日本舞踊
  • 邦楽
  • 寄席芸能
  • 伝統芸能の舞台裏
対象
  • 入門者向け
  • 親子で楽しめる