2025年度から新たに始まる「江戸東京伝統芸能祭」は、半世紀以上にわたり親しまれてきた「都民芸術フェスティバル」を継承し、能楽、日本舞踊、邦楽、寄席芸能、民俗芸能など、日本の伝統芸能に特化した祭典として生まれ変わりました。本格的な舞台公演から、気軽に参加できる体験型ワークショップまで、子どもから大人まで幅広い世代にお楽しみいただけます。

執筆 ・ 写真 : 櫻庭由紀子|撮影協力 : 浅草演芸ホール
この記事のポイント!
★ 初心者にも分りやすく解説「寄席や演芸場の入り方」
★ 春風亭昇々が教える「寄席の楽しみ方」
★ 寄席芸能が楽しめる都内の寄席と演芸場

浅草演芸ホール : 都内で最も大きい寄席!
後半は、寄席に行ってみよう実践編!「寄席に行ってみたい!でも1人だと不安」という方のために、
寄席の入場の方法から番組の流れ、東京の寄席と演芸場をご案内いたします。
春風亭昇々師匠直伝の「寄席の楽しみ方」もお届けします。
では、早速行ってみましょう!
通常の鑑賞マナーさえ守っていれば、堅苦しいルールはありません。
ドレスコードもありません。いつもの普段着でOK。面白ければどんどん笑ってください。
飲食の可否は寄席や演芸場によって変わるので、公式サイトで確認しましょう。
寄席によってはお弁当の販売も。お酒に酔った状態での入場はやめましょう。
そして気をつけていただきたいのが、スマホの着信音。上演の前に、必ず電源をオフにしておくのがマナーです。
では、寄席に行ってみましょう!
① 木戸でチケットを購入
「木戸」とはチケット売り場のこと。チケットの訛りで「テケツ」ともいいます。
「木戸銭」とは入場料です。木戸銭は3,500円前後で、正月や夏休みなどの特別興行では4,000円前後になります。
多くの寄席では予約は必要ありません。
寄席には昼席と夜席があります。
入れ替え制を採用していない寄席の場合、昼席で入場したら、なんと夜席までいられます。
でも、再入場はできないので注意しましょう。② チケットを渡して席へ
木戸で受け取ったチケットを持って入り口へ。モギリのスタッフさんにチケットを渡して半券を切ってもらったら、ホールに入って好きな席に座りましょう。
③ さあ!寄席芸能を楽しもう!
笑いたいときには大いに笑って、すごいと思ったら大いに感心してください。
ネタバレ、フライング大笑いやフライング拍手は野暮なのでご注意を。④ いつ出ても、トリまでいてもOK
寄席はいつ入っても良いですし、いつ退場しても構いません。開演からトリまで目一杯楽しむ人もいますし、贔屓の芸人さんの目当てに、上演時間に合わせて入る人もいます。
仲入は休憩タイム。トイレに行ったり、飲み物を買ったりなどできます。
寄席によっては売店があります。お弁当やお菓子、飲み物のほかに、寄席でしか買えない芸人のグッズも売っています。ぜひチェックしてみてください。⑤ 終演後もお楽しみ
昼席の終演は16時頃、夜席の終演は21時前後。寄席は繁華街に多いので、周辺のお店に立ち寄るのも楽しみですね!
寄席はなんといってもコスパの良さ。入れ替え制なしでも、3,500円前後で最大8時間以上も楽しめてしまう、庶民の味方です。
開場になると「一番太鼓」が「ドントコイ、ドントコイ」と鳴ります。開演前は「二番太鼓」。「お多福来い来い、お多福来い来い」と鳴っているそう。
出番は前座から始まります。これを「開口一番」といいます。その後は、二ツ目、真打と続きます。寄席・演芸場によって出演人数が変わります。
途中で休憩「仲入り」が入ります。仲入り前の最後の高座は、番組の中でも2番目に重要な役割です。仲入り直後の高座を「くいつき」といいます。休憩で気がそれた観客の関心を戻す勢いの芸が求められます。番組の最後は「トリ」ですが、その前に色物が入ります。
これを「ひざがわり」と言います。トリに入る前に会場の雰囲気を切り替えて、トリを演じやすくする難しい役どころです。
そしていよいよ番組最後の「トリ」。トリは番組の主任で、ベテランの真打です。
寄席の終演に鳴るのが「追い出し」といいます。デテケ、デテケ(出て行け、出て行け)と鳴っているそうです。
寄席は1ヶ月を10日ずつ分けた上席・中席・下席で番組(出演者のプログラム)が変わります。
また、その日にかける演目は、ほとんどの場合決まっていません。出演者が当日に、その日の観客の反応や季節、話題から演目を決めます。
芸人は自分がかける演目が他の出演者と被らないように、出番を待つ間に当日のネタ帳(その日の演目を記録した帳面)を見て決めます。
まさにその日限りのライブ。寄席は、番組をまるごと楽しめる、寄席芸能のフェスなのです。
それではここから春風亭昇々師匠にバトンタッチし、落語家直伝の寄席の楽しみ方をお話しいただきましょう。
「寄席に行けば人生が変わる…」 かもしれない!?
春風亭昇々の “胸熱!寄席案内”人の心には、いくつもの扉がある。普段、扉の多くは閉じている。しかし、何かの拍子でそれが開けば、もう前の自分には戻れない。つまり人生が変わる。
そんな心の扉を開く可能性が、寄席にはある!かもしれない…。
寄席にしかないもの。それは“生”だ。生きているものが何かを伝えようとする場。そこにあるのは人間(演者)と人間(お客さん)のぶつかり合い。それが圧倒的多量の時間の中で行われている。なんて時代に逆行している。だからこそなんて新しい!
面白ければ笑い、泣きたければ泣く。何も感じなければぼんやり眺める。音楽ライブみたいに立ち上がる必要もない。しかしずっといれば、何かは感じずにはいられない。なぜなら演者はプロだから。ここには人間の気概がある。
つまらないかもしれない。古臭いと思うかもしれない。私も初めて寄席に行ったとき、ちょっと思った。しかしそれだけではなかった。ウケなくとも精一杯、演じ続ける噺家がいた。そして思った。「これって、カッコ悪いけど超カッコいいかも」。それは私が人生で初めて触れた感動であり、つまり新しい心の扉が開いた瞬間であった。
私は、人の心を動かしたい。あのカッコ悪い噺家のように。だからこんな熱くカッコ悪い文章を書いてしまった。だからやっぱり「寄席に行けば人生が変わる」と言いたい。新しいことに触れなければ新しい心の扉は開かない。扉を開けに、ぜひ寄席にお越し下さい!都内の主な寄席と演芸場紹介!
鈴本演芸場
台東区上野2-7-12
Tel. 03-3834-5906新宿末廣亭
新宿区新宿3-6-12
Tel. 03-3351-2974昇々の寄席ひとり言
まるで落語の世界を絵に描いたような雰囲気の
趣がある寄席。浅草演芸ホール
台東区浅草1-43-12
Tel. 03-3841-6545昇々の寄席ひとり言
演芸の街浅草で歴史のある都内で最も大きい寄席。物販も充実!
池袋演芸場
豊島区西池袋1-23-1 エルクルーセ
Tel. 03-3971-4545昇々の寄席ひとり言
コンパクトな会場で演者が近く、
より迫力を味わえるかも!お江戸上野広小路亭
台東区上野1-20-10 上野永谷ビル 2階
Tel. 03-3833-1789昇々の寄席ひとり言
比較的安く気軽に楽しめる演芸場。
アットホームな優しい雰囲気。
春風亭昇々
新作落語の革命児。千葉県出身の41歳。2007年春風亭昇太に入門。
2016年「第二回渋谷らくご大賞」、2020年「渋谷らくご創作大賞」を受賞。
2021年に真打へと昇進し、さらなる新作落語の創作に挑んでいる。
寄席は何度も行ってこそ、そのライブ感を楽しめます。
芸人と観客が一緒に作り出す一体感は、テレビや動画では味わえません。これこそ寄席の醍醐味です。
一番身近な大衆演芸場、寄席の世界を楽しんでくださいね!
櫻庭由紀子
北海道出身の作家、ライター。
落語をはじめとした伝統芸能、江戸文化、江戸怪異について解説する一般書、小説、コラムを執筆する。
近著に「江戸の怪談がいかにして歌舞伎と落語の名作となったか」「落語速記はいかに文学を変えたか」
「古典エンタメあらすじ事典」「江戸でバイトやってみた。」がある。

2026年1月18日(日)、調布市文化会館たづくり にて開催!
楽語・和妻・狂言・三味線・日本舞踊など多彩な演目を、
プロの指導による体験とダイジェスト公演の両方で
お楽しみいただけます!

2026年2月18日(水)、三越劇場にて開催!
歌川広重の代表作「名所江戸百景」が描かれてから170年。
ジャポニスムを代表する作品群を背景に映し出しながら、
落語と端歌で江戸人の暮らしと心情を描き出します。

2026年3月8日(日)、三越劇場にて開催!
落語とクラシック音楽が出会い、新しい舞台がここに誕生!
バンドネオンや尺八の音色、歌の響き、
そして柳亭市馬による語りが交わり、
情緒とユーモアに満ちたステージをお送りします。

2026年1月17日から3月15日まで、都内8か所で開催!
落語、浪曲、講談、漫才など、
江戸時代から続く粋で豊かな大衆文化「寄席」を
豪華出演陣による演目と識者による解説とで構成し、
さらに浪曲の会、講談の会と特徴づけた番組もお届けします。